アイドルそのものへ!

つねに今ここにいるアイドルそのものへと立ち戻って語ること。

【神宿から始めるアイドル入門】0.なぜ、みんなアイドルについて語るのをやめてしまったのだろう?

 今から5年ほど前、AKB48がお茶の間を多いに沸かせ、「社会現象」とまで呼ばれていたあの頃、多くの人たちがアイドルについて語っていた。アイドルに詳しい人がアイドルについて書き、アイドルについてあまり詳しくない人も、アイドルについて書いた。

 あの頃、アイドルを語っていた人たちの多くが、今ではいなくなってしまった。アイドルが「社会現象」ではなくなったから、みんな離れていってしまったのだろうか。そういった人もいるだろう。逆に、アイドルに深入りしすぎて、結果として語ることをやめてしまった人もいるだろう。でも、今、誰もアイドルについて語らないのは、すごくもったいない。今こそ、もっともアイドルがおもしろい時代だからだ。

 誰かが、今のアイドルについて、書いてくれないかと思っていた。ところが、待てど暮らせどなしのつぶてである。アイドルについて論じられた本は一時期ほど発刊されなくなり、大手アイドル情報サイトの更新のペースも遅くなっているようではないか。

 ならば、微力ながら、私が書くしかない。そう思い立って、筆を執った。

 しかし、私も、今の膨張しつつあるアイドルシーンの全てを知っているわけではない。また、私は大上段に構えた社会評論や地に足のつかぬ一般論を書きたいわけでもない。そこで、具体的に、一つのアイドルグループにご登場いただくことにする。

 私がここで取り上げるのは、「神宿」(かみやど)というアイドルグループだ。赤色担当:一ノ瀬みか、青色担当:羽島めい、黄色担当:羽島みき、緑色担当:関口なほ、ピンク担当:小山ひな をメンバーとする、5人組のアイドルグループである。2014年9月、原宿でスカウトされた5人によって結成された。2015年には1stアルバム『原宿発!神宿です。』をリリース。2016年には世界最大のアイドルフェスであるTIFに初参戦。同年、主演映画『神宿スワン』公開。2017年、初の全国ツアーを行い、完走。――予備知識はこれくらいで十分だろう。

 「なぜ、ほかならぬ<このアイドル>について書くのか?」という問いに、アイドルについて書く全ての書き手は同じ答えを返すのではないか。「<そのアイドル>に、自分が魅力を感じるから」、そして、「<そのアイドル>の魅力には、普遍的な意味合いがあると思うから」。私の答えも、同じである。私にとって神宿は魅力的なアイドルであり、そして私は、神宿の魅力を語ることは、今のアイドルシーンの魅力を語ることになると思っている。