アイドルそのものへ!

つねに今ここにいるアイドルそのものへと立ち戻って語ること。

2017-01-01から1年間の記事一覧

『原宿着!神宿です。』全曲レビュー track 2. 原宿戦隊! 神宿レンジャー

シングル曲としてリリースされていたライブの定番曲「原宿戦隊! 神宿レンジャー」が2曲目にやってくる。 「戦隊モノ」をコンセプトにした楽曲。作詞作曲を手掛けたのは青SHUN学園のプロデューサーであるSHUN。SHUNは、神宿のプロデューサーである北川から、…

『原宿着!神宿です。』全曲レビュー track 1. Overture

2017年11月14日にリリースされた神宿の新しいアルバムは、1stアルバムと同じく、Overtureとともに幕を開ける。 静謐な管楽器系シンセの調べから4つ打ちのビートが刻まれ、ヴォコーダーのような機械音声での「K. M. Y. D. 」という台詞とともに視界が開け、楽…

【ライブレポ】神宿3周年ライブ『神が宿る場所〜HARAJUKU DREAM DAY1~』@ラフォーレ原宿

0. 神宿は原宿をジャックし、舁夫はラフォーレ原宿をジャックした! 「アイドルオタクをしていなければ、決して行くことがなかった場所がある」と、熱心なアイドルファンは言う。アイドルを追って西東、時に地下のライブハウスに潜り、時に天空のステージへ…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー 目次

本ブログでは、神宿の1stアルバム『原宿発!神宿です。』の全曲レビューを行いました。 各曲の記事へのリンクをここにまとめておきます。 1. Overture 2. KMYD 3. 全開!神宿ワールド 4. あの娘にばれるような・・・ 5. ビ・ビ・ビ♡ 6. 必殺!超神宿旋風 7. 僕…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 10. Summer Dream

ストリングスとピアノにのせた小山ひなのソロ歌唱から始まり、そこからホーンが爆発してハイテンションな楽曲になだれこむ。アルバムの最後を飾るのは、今や神宿の夏のステージの定番曲ともなった楽曲だ。 歌詞中では明示されていないものの、何かのスポーツ…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 9. はじまりの鐘を鳴らせ

『ビ・ビ・ビ♡』の項でも書いたが、『ビ・ビ・ビ♡』とこの『はじまりの鐘を鳴らせ』は、神宿への楽曲提供のオファーを受ける前から、ながいたつのストックにあった曲だった。よって、この曲にも、AKB48への提供を想定した曲ではないかという疑惑が起こる。ア…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 8. ぱらしゅ~と☆らぶ

ピコピコの中田ヤスタカサウンド、要はPerfumeである。私が勝手に言っているわけではない。作者のながいたつも、インタビューにおいて、「「今回の神宿はPerfumeだな」って言われるような曲を、あえて作りました」と述べている。確信犯である。歌詞中に「チ…

マーティ・フリードマンが選ぶ「日本のベスト・ロック・バンド 10選」にまねきケチャとももクロがランクイン

英国の音楽誌Classic Rockの企画で、元メガデスのギタリスト、マーティ・フリードマンが「日本のベスト・ロック・バンド10選」を選んでいます。 teamrock.com 多くのロック・バンドに混ざって、最後の2選で紹介されているのはまねきケチャと、ももいろクロー…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 7. 僕らは愛を信じている

アルバム用に書き下ろされた楽曲だ。 小山ひなの歌唱によるアタマサビで始まるのは、神宿の多くの曲に共通する構成。しかしBメロではビートルズ "A Day in the Life" を彷彿とさせる不穏なストリングスが鳴り響き、そこから関口なほによるブリッジ。サビに突…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 6. 必殺!超神宿旋風

この曲の中で関口なほは、「正直歌詞の意味難しすぎてよくわかんない」と歌っている。しかし、詞はそこまで難解ではない。もしも「よくわかんない」部分があるとすれば、それはオマージュ(パスティーシュ、パロディ、まあ、何でも構わない)の部分だろう。 …

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 5. ビ・ビ・ビ♡

「はじまりの鐘を鳴らせ」と「ビ・ビ・ビ♡」は、神宿への曲提供のオファーを受けた時点で、ながいたつのストックに既にあった楽曲らしい。10日で3曲を準備しなければならないという無茶なスケジュールだったため、急遽神宿用に歌詞を書き直し、レコーディン…

滝口ひかりとサルトル――「もう一度人生をかけて0からスタート」するということ

三嵜みさと・滝口ひかりの両名が、11月11日の公演をもってdropを卒業することを発表した。 滝口が自身のツイッターで述べた言葉は感動的だ。 もう一度人生をかけて0からスタートしなければならない 滝口ひかりなんてちっぽけな存在だと自分に言い聞かせなけ…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 4. あの娘にばれるような・・・

「KMYD」、「全開!神宿ワールド」と、<神宿にしか歌えない>曲が続いた後に、はじめて自己言及フレーズを含まない楽曲が登場する。バンド編成を基調としたJ-ROCK風のトラックとアクの少ない曲調を持つ、神宿入門にうってつけの一曲と言えるだろう。初めて神…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 3. 全開!神宿ワールド

アルバム3曲目にして名曲中の名曲が登場する。「曲を作っているうちに、どんどん色んなアイデアが出てきて、どんどん曲のスケールが大きくなっていきました」とは、作曲者のながいたつの弁。それほどにこの曲には多くの要素が詰め込まれており、曲調はめまぐ…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 2. KMYD

『原宿発!神宿です。』を聴くものの耳に一番最初に聴こえてくる言葉は、「はじめましてで お目にかかります」という詞。そう、冒頭に配置されたこの楽曲は、リスナーに向けた、神宿による自己紹介だ。 小山ひなの「最初から完成された」歌唱の後に、やや緊張…

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 1. Overture

アイドルについて語るときに、往々にして見過ごされがちなのが「楽曲」だ。「楽曲派」という言葉も昨今では市民権を得てきたものの、アイドルをめぐって書かれる言葉の多くは、未だに「接触」や「ライブ」や「ビジュアル」に費やされている。しかし、アイド…

【神宿から始めるアイドル入門】8.羽島みきに学ぶリーダー論

アイドルグループのリーダーといえば、一般的にはしっかりもの、グループのまとめ役というイメージが強い。ライブでのMCやメディア出演時には、リーダーがグループを代表してトークをする。エースと兼任する「エーダー」と呼ばれるタイプのリーダーも多い。 …

【神宿から始めるアイドル入門】7.なぜ、神宿は自分たち自身について歌うのだろうか(2)

「アイドル〈である〉」ことが余計な批評なしに受け入れられるようになった現代でも、なぜアイドルは自己言及するのか。ここに至って、安西の説明はいっそう難解になる。「ももクロが自己の生成過程を開示し、自己のあり方をさらけ出し、それを笑うことは、…

【神宿から始めるアイドル入門】6.なぜ、神宿は自分たち自身について歌うのだろうか(1)

神宿の1stアルバム『原宿発!神宿です。』の収録曲を眺めていると、あることに気がつく。「KMYD」、「全開!神宿ワールド」、「必殺!超神宿旋風」、「ぱらしゅ~と☆らぶ」。全10曲中、実に半数近い4曲で、曲中、もしくは歌詞中にグループ名「神宿」の文字が…

【神宿から始めるアイドル入門】5.「裏の喪失」に抗う神宿運営(3)

アイドルたちの「舞台裏」を公開し、「裏方」であるプロデューサー自らが「表」に出て、露出を重ねるという戦略が、最近のアイドル運営の主流だった。この戦略は、「ガチ」感を生み出し、また、発信者側に立っているかのように錯覚させることで、ファンの熱…

【ライブレポ】OnePixcelワンマンライブ『NATSUMATSURI』@渋谷WWW

日曜の渋谷は、特別に混んでいた。神宮外苑で花火大会があるからだろう。着物姿の女子たちがグループを為して歩き、ときどき集まって自撮りなどしている。あまりの人口密度に軽い眩暈に襲われながら、渋谷の坂を上った。 急な階段を下りて、会場である渋谷WW…

【神宿から始めるアイドル入門】4.「裏の喪失」に抗う神宿運営(2)

アイドルのライブ現場でも、「裏」の喪失は問題を引き起こしている。まねきケチャのプロデューサーである古谷完もまた、SNSアカウントなどを駆使して、積極的に露出を行うプロデューサーの一人だ。まねきケチャの楽曲『タイムマシン』では、冒頭に男性の声に…

【神宿から始めるアイドル入門】3.「裏の喪失」に抗う神宿運営(1)

精神科医で作詞家の北山修は、社会から「裏」がなくなってきていると指摘する。かつて、町には「裏があって、闇があって、表に出てきてはいけないことがいっぱい起こっていた」(北山 2010)。しかし、今や、町は明るく照らされ、駅裏、屋根裏、裏口、裏日本…

【神宿から始めるアイドル入門】2.〈大きな物語〉は終わり、神宿が現れた!

音楽ライターの南波一波はインタビューで、現在のアイドルシーンについて訊かれ、次のように答えている。「抽象的ですが、今は徐々に洗練される方向へ進んでいるように思います。よく節目とされるのは「アイドル戦国時代」ですが、一時期はたくさんのグルー…

【神宿から始めるアイドル入門】1.神宿って宗教団体か何かだろうか。えっ、アイドル!?

「神宿」という名前を聞いて、あなたはどう思っただろう。私は最初、宗教団体か何かだと思った。だって、「神」の「宿」である。あやしさ満点である。「神宿」がアイドルグループで、そのネーミングはメンバーたちがスカウトされた場所である「神宮前」と「…

【神宿から始めるアイドル入門】0.なぜ、みんなアイドルについて語るのをやめてしまったのだろう?

今から5年ほど前、AKB48がお茶の間を多いに沸かせ、「社会現象」とまで呼ばれていたあの頃、多くの人たちがアイドルについて語っていた。アイドルに詳しい人がアイドルについて書き、アイドルについてあまり詳しくない人も、アイドルについて書いた。 あの頃…