アイドルそのものへ!

つねに今ここにいるアイドルそのものへと立ち戻って語ること。

『原宿発!神宿です。』全曲レビュー track 5. ビ・ビ・ビ♡

 「はじまりの鐘を鳴らせ」と「ビ・ビ・ビ♡」は、神宿への曲提供のオファーを受けた時点で、ながいたつのストックに既にあった楽曲らしい。10日で3曲を準備しなければならないという無茶なスケジュールだったため、急遽神宿用に歌詞を書き直し、レコーディングまでこぎつけた。爽やかなイントロから流れるように広がっていくメロディーは、アイドルソングの王道といった趣きだ。

 憶測にすぎないが、AKB48への楽曲提供も行っていたながいは、AKBに提供するつもりで本曲を書いておいたのではないか。オーケストラルヒットやパワーコードを刻むギター、ペンタトニックを中心とした速弾きのギターソロ、「きっと」「君と」の追っかけコーラスなど、そう思わせるまでに、この曲の「AKB成分」は濃い。ライブでも、ユニゾンで5人が歌うという、神宿には珍しい歌唱形態がとられるところにも、AKBの影響が伺える。

 一方で、詞は「神宿用に書き直した」だけあって、少年少女の恋の予感と不安を、新人アイドルとファンの関係と巧みに重ね合わせたものに仕上がっている。デビューしたての神宿が、「少しだけでも 気になるのなら足を止めてほしいな」と呼びかけ、「僕を好きになりそう?」と問いかける。フェスなどで、ステージ上で懸命に歌い踊る、知らないアイドルと出会ってしまい、少年少女の一目惚れにも似た、強い<始まりの予感>を「ビ・ビ・ビ♡」と抱く。このブログをお読みになっている方にも、そんな経験がきっとあるのではないだろうか。

 歌唱面での聴きどころは、「僕を好きになりそう?」でのファルセット歌唱だろう。おそらくCD音源での歌唱は小山ひな。直前部の地声での歌唱から、シームレスにファルセットに移行する、技術的な高さを窺うことができる。